植物のいのち

 以前見たNHKスペシャル、「超進化論」でとても感動したことについてのお話です。

堺 雅人さん、西田敏行さんを案内役として繰り広げられた「新しい進化論」、第Ⅰ回は「植物」でした。

 植物は、静かで意思もなく生きていると思っていましたが、とんでもないことでした。虫に食べられると、伝達物質を発散し、それを受け取った周囲の植物は、虫に対する毒物を生成します。 日陰の植物は、地中にはりめぐらされた菌糸を通して、日の当たる大木から栄養をもらって成長します。森は太陽を求めて競い合って枝を張り巡らしているように見えますが、実は共存共栄して、植物の多様性を育んできたのです。            

  植物は、もちろん生存競争のなかにありますが、たがいにコミュニケーションをとり、協力して生きています。これが、競争以上に必要なのだと強く感じました。

 ふりかえって人間社会を見てみれば、生きてゆくためには、競争が最も重要なことでした。その思想的な背景には、まず、ダーウィンの進化論があります。生存競争によって強いものが勝ち残り、現在の生態系を作り出したという考え方です。

また、アダムスミスは国富論で、自由競争を保障することで需要と供給がかみ合い、経済が豊かになるととなえました。この二つの考え方が両輪となって、今日の資本主義経済は発展してきました。

 しかし、科学技術の発展は、ダーウィンの進化論を塗り替えようとしています。私たち人間社会も、競争至上主義の考え方を見直し、共存共栄することで多様性を維持することを考える時期がきているように思います。

 天台宗開祖 最澄に「一切衆生悉有仏性」ということばがあります。一切衆生とは生きとし生けるもので植物も含みます。また、親鸞聖人は唯信鈔文意で「仏性すなはち如来なり。この如来微塵世界にみちみちてまします。すなはち、一切群生海のこころにみちたまえるなり。草木国土ことごとくみな成仏すととけり」と書いています。

 植物にも人間と同じこころを認め、成仏を認めていた慧眼には、驚くばかりです。

 この大自然のなかで共に成仏していくものとして、すべての生きとし生けるものに、手を合わせるこころを大事にしていただければ、ありがたいことと存じます。

 再放送がありましたら、NHKの「超進化論」をぜひ見てください。